2008年9月6日土曜日

第3回 9/19 (金) 16:00~  総合研究棟 A205会議室

寄生蜂-寄主の3種実験系において共通の捕食者がもたらす共存持続性
石井弓美子さん(生命共存科学専攻・共存生物学研究室)

生物群集において、その構成種は、捕食・被食や資源をめぐる競争という生物間相互作用を及ぼしあいながら複雑な食物網を形成している。最近では、群集構成種の形質を介した動態への影響が注目されており、個体の学習による可塑的な行動の変化や進化による形質の変化などが個体群動態、ひいては群集の構造にまで影響を及ぼすことが数理モデルにより理論的に予測されている。しかし、これらの理論に対する実際の生物を用いた検証はほとんどなされていない。よって本研究では、2種のマメゾウムシ(アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ)とその共通の捕食者である寄生蜂1種(ゾウムシコガネコバチ)からなる寄生蜂-寄主3種実験系を用い、寄生蜂による捕食が、個体レベルの生物間相互作用を介して3種系の共存持続性に与える影響を調べた。
累代実験の結果、寄生蜂のいないマメゾウムシのみの系では競争排除により1種が消滅するのに対し、寄生蜂を導入すると3者が長期間共存した。さらに、寄生蜂が存在するときには2種マメゾウムシの個体数が交互に増加するような「優占種交替の振動」が見られた。また、寄生蜂の2種マメゾウムシ幼虫への産卵行動を調べると、寄生蜂は産卵経験により寄主幼虫を学習し、その後の産卵では産卵を経験した寄主幼虫に対し産卵選好性を持つことが示された。このような学習行動は、個体数の多い寄主に対して選好性を持つスイッチング捕食を引き起こす可能性がある。そこで、累代実験系から寄生蜂を取り出してその選好性を調べると、寄生蜂の選好性は寄主幼虫の頻度と相関があった。これらの結果から、寄生蜂による正の頻度依存的な捕食が、本実験系において3種の共存を促進したと考えられる。学習による行動の変化は多くの動物で報告されており、学習という進化などに比べ非常に短いタイムスケールで起こる行動的可塑性は、多様な群集の共存維持に大きな役割をもつ可能性がある。

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