交尾中のアジアイトトンボにおける雌の精子貯蔵器官内の精子数の動態
保全生物学研究室 D1 田島裕介
アジアイトトンボの交尾行動は、雄の腹部の動きの違いから、3つのステージに分けられる。処女雌を交尾させたところ、ステージⅠでは、精子が注入されず、ステージⅡで精子注入が開始されていた。また、交尾時に受け取った精子は、約6割が交尾嚢、4割が受精嚢に貯蔵されることがわかった。本種の雌の精子貯蔵器官は交尾嚢と受精嚢からなり、両者は受精嚢管によって接続している。一方、雄の副生殖器の先端には一対の角状の付属器があり、雌の精子貯蔵器官内の精子を掻き出す機能をもつといわれている。野外において、既交尾雌を用いた交尾中断実験を行なうと、ステージⅠの間に交尾嚢で精子数の減少がみられた。本種の雌の交尾嚢と受精嚢をつなぐ管は細くて長いため、付属器は受精嚢まで届かず、雄は交尾嚢内の精子しか掻き出せないと予測される。しかし、受精嚢でも精子数の減少が見られたので、精子の掻き出し以外の何らかの精子置換機構が存在するかもしれない。
モンゴルステップにおける土壌CO2、CH4フラックス
陸域生態研究室D3 浦野忠朗
近年、人間活動と自然生態系由来による大気のCO2とCH4濃度が増加してきている。これらの物質は高い温室効果を持ち、問題となっている気候変動の主な要因と考えられている。これらの物質を固定し、大気中の濃度を低下させるのは植物による光合成と土壌微生物による窒素固定である。
特に、土壌には大量の炭素が蓄積されており、その動態は気候変動の諸来予測を考える上で重要である。土壌の生物活動は、生態系及び土壌環境の状態により、CO2とCH4を発生させる場合も吸収する場合もある。そのために、多様な生態系でそれぞれのフラックス(地表面での土壌と大気間の物質の移動)を測定し、その環境依存性を解析して量を推定する必要がある。
本研究対象地のモンゴルは、国土面積の約75%である1150000km2が、土壌CO2・CH4フラックスのデータが少ないステップであり、フラックスの調査が必要とされている。本研究では、土壌CO2・CH4フラックスの日変動及び季節変動を現地で測定し、環境依存性を評価しモデルを作成することにより、典型ステップにおける土壌CO2・CH4フラックスの季節変動パターンと年間の量を評価することを目的として研究を行った。また、モンゴルのステップで一般的に行われている放牧を停止した場合でのフラックスも同様に測定した。その結果、全ての測定でCO2フラックスは放出であり、CH4フラックスは吸収であった。CO2フラックスは地温と土壌水分に対して有意に増加し、CH4フラックスの吸収量は地温に対して有意に増加、土壌水分に対して有意に低下した。また、モデルを用いて推定した結果、一年間の土壌フラックス量はCO2で約1t CO2 -C ha-1 yr-1、CH4で約-1.4CH4 -C ha-1 yr-1となり、冬季にはどちらのフラックスも0に近い値となった。さらに、放牧区と、放牧を止めた禁牧区で比較を行った結果、有意差はなかったものの禁牧区でCO2フラックス量が多い傾向があった。
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